カプ厨で夢厨で厨二病で高二病なオタが好きな物を欲望のままに書いています。

2023年1月14日土曜日

「even if TEMPEST 宵闇にかく語りき魔女」感想

 公式のジャンル区分からして物語の比重が高めの作品かと気になってプレイしました。
 全体的には物語も面白くキャラも気に入ったのですが、終盤の展開は開発期間などによるものかやや大味という印象(それに付随してかそこそこ誤脱が散見されました)。脳みそすっからかんでしか物語を読まない私が首を傾げる描写もあり、そこは残念。
 とはいえ、ファンディスクでも縦軸のストーリーがあると嬉しいと思いながらFD待機中です。

 以下、ネタバレあり感想。


◆話

 途中まで、具体的にはゼンの章入ってすぐくらいまではかなり楽しんでプレイしていました。
 マヤが死んだり手を汚せば心苦しく、ルーシェンは気丈にアナスタシアのためになろうと頑張っていて、クライオスはその病気の影響もあろうが魔女の道化としては動こうとせず、ティレルは普段の立ち居振る舞いと対照的ながんじがらめが可哀想だった。
 裁判も、殿下のスープは前振りとメタ的な読みで犯人も捜査段階で分かっていましたが、だからこそ逆にどうすればいいのかさっぱり分かりませんでした。
 しかし、開かされたゼンの出自設定が気になったり、クロエが癒やされる最終章のシーンで、そういう展開を書きたいならもっとモブを書き込んだり作り込んだりしてもらいたかった等ありました。元から細々そういう部分はあったのですが、あれは一番残念だった。事前の魔女裁判でもっと陪審員の言動を書き込んでいれば、おそらくまた別の感想だったでしょう。
 大体の人は偶像崇拝がない国という辺りで薄々アナスタシア=クロエを察していたと思うので、とにかく終盤は全体的に尻すぼみ感が否めない。
 個別エンドもノルマみたいなキスより通常の掛け合いの方が良かったです。とはいえ乙女ゲームみたいなものだし、例えアレですがエロゲのエロ枠平等にみたいな仕方なさもあるんでしょうか。



◆キャラクター

・アナスタシア・リンゼル
 私の好みの少女キャラとはなかなか異なる外観なので今までプレイするか悩んでいたのですが、クロエと表層的な要素がまるっと正反対であるのは一つの肝と考えると外せませんね。素体(魂)が同一と言うこともあって、根っこの部分は存外似て見えました。
 せっかくの騎士キャラなのでもっと大立ち回りしてくれると嬉しかった。ただ、戦闘描写は画像素材の準備が難点か……。

・ルーシェン・ノイシュバーン
 自分の章より他キャラの章でかなり好感度稼いでいったキャラ。
 最終章は他三人にも描写が割かれるためちょっと割食っていた感じありますが、攻略キャラ内で一、二を争う好きな人物です。病弱とまではいかないにしろ、今でもそう頑健な体の持ち主というのではないみたいなので長生きして欲しい。

・クライオス・キャソロック
 クライオスとティレルではクライオス先でした。現在の所属組織を優先。
 四人の中では最も甘い章だと感じました。サッドラブといいそういうの担当枠なのか。

・ティレル・リスター
 何がそんなにツボだったかと問われると言葉に詰まるのですが、ルーシェンと並んで好感度一、二を争っています。
 ただ、個別エンドは個別クリア後のイシュでフォロー入るものの、ちょっと好みではありませんでした。

・ゼン・ソルフィールド
 バックボーンが分かってしばらく整理の時間が必要でした。今ではあの世界の技術がつぎはぎな理由を踏まえると、まあ必要な設定だったかなと受け入れています。眼鏡かけて。

・マヤ・カークランド
 レティシア関係が完全に舞台装置なのがとても残念なこと以外は大好きなキャラ。クライオスの章で死んだ時は、だからとてもショックでした。仕方ないとはいえ最終章でほぼ活躍がないのも。

・王子ーズ
 コッテコテな人ですが特にコンラッドはやらかしが大きすぎて半目で見てしまいます。
 パーカーは末路的にもまあいいかと。

・エヴェリーナ
 レティシア関係が完全に舞台装置枠その2。
 クライオスと同じ病と提示されて、レティシアの件を提示されて、はいおしまい、はちょっと首肯しかねる。提示の仕方も今ひとつで、正直まだ何かあるだろうと思っていました。

・オーラ
 コッテコテの引き立たせ役過ぎて結構好きです。死に戻り前ですらコンプレックスあるのがどうにも哀れでね……。

・父親
 病に伏している、が最終言及なのどうにかなりませんか。

・翼騎士団の候補生トリオ
 終始賑やかしだったのが癒やしでもあり残念でもあり(ランドンのアレとかありますが)。
 もっと長尺の物語になっていいからメインストーリーにもうちょっと絡んでもらいたかった。

・ルーン
 世界線という言い回し乱用にいらっとするタイプなので突っ込んでくれて良かったです。それだけでもう好きかもしれない。
 というか、「シュタゲ」でオタク界隈に流布された言い回しですが、当該作からして平行世界という意味では世界線という用語を用いておらず、全く納得いかない……。

・イシュ
 一番はずっとずーっとクロエでいて欲しい。
 それはそれとして、アナスタシアや以降の転生体のことも好きだったり嫌いじゃなかったりすごく好きだったりして欲しい、そんなキャラ。

・クロエ
 アナスタシアにさくっと平凡扱いされるので逆に心置きなく愛すことが出来ました。好きですよ、クロエ。スーパーロングヘアーなところとか、一般通行女子みたいな感性とか。
 しかしイシュの行動からするとつい最近まで転生していなかったように見えますが、その辺どうしてなのか本編中で知りたかった。エンダーさん絡みも同様。



◆演出

 短めのシーンでいい曲を流すと盛り上がる前にぶつ切れか盛り上がりつつぶつ切れなのと、雑踏SEなどのループ処理が雑なこと以外は良かったです。



◆システム

 オートセーブが機能していない様子なこと、演出のウェイト設定のせいで既に文章読み終わってるのに一枚絵のスライド待ちさせられること、バックログ遡るたびにシステムSE鳴ること以外は文句なしです。
 強いて言うならバックログから帰ってくる時に別のボタンを押すのではなくそのままアナログスティック下向ければ戻れるようにして欲しかった程度でしょうか。



◆最後に

 冒頭に書いた通り、私は他の人が盛んに矛盾など指摘している作品でも「えー面白かったよー」で終わるような人間なので、もうちょっと粗が見えないように調理してもらいたかった素材ではあります。
 でも、死に戻り題材や殿下スープ周りのエピソードなどぶち込んできたのはとても面白かったし、攻略キャラとの交流が甘ったるすぎない点も私の好みでした(というか私にはあの甘さで十二分にはちみつ直飲みの甘さです)。ファンディスクも気になるし、この系統であと何作か読みたいぐらいには良かったので、ボルテージさんにはよろしくお願いしたいところ。